金曜日, 7月 21, 2006

役立つこと、適切なこと

透明のビニール傘は安物だというだけじゃなくて、
太陽の少ない雨の日には空の光が入る明るい傘で
そのことが気に入っています。

物にはさまざまな評価の基準がありますが、
哲学者アラン・ド・ボトンの言葉の中に
人生で重要なのは、役立つことと、適切なことというくだりがあり、
ふと立ち止まって考えます。

役立つことと適切なことが同時に含まれている、という解釈は
自分の心を調整するうえでとても重要なことのように思います。
必要か不必要かという判断よりも
役立つかそうでないかは個人らしい視点であり、
正しい、間違いという判断よりも
適切かそうでないかという判断はより人間らしい指標です。

がん治療に関する加速器の研究を始めましたが、
どこでもそうですが現場では目標が収束しないことがあります。
アメリカでは医学物理士が5000人もいて
技術スタッフが非常にたくさんいて
翻って日本には500人しかいないとかで、
さあ増員、という流れのようなのですが、
アメリカの医療は基本的にお金がかかり過ぎていて、
皆保険のない国なのに放射線治療費は大体日本の3倍で、
その制度の下で医療の質が保持されているのだそうです。

一方で皆保険で充実した医療が行き届いている日本では、
医療スタッフの数が極端に少なくてとても忙しいのに、
一方で薬剤による出費が非常に多く、
こういうところに日本らしいモノ社会の一端が
問題を現しています。

どちらの状態も、
役立ちはしているのですが何かの適切さを欠いています。

皆保険であるか、皆保険でないかは制度の問題で、
どちらにも欠点はあります。
それぞれの状態が生じる不適切な場面を
どのようにして改善していくかが重要です。

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