火曜日, 3月 08, 2005

北を忘れて何が悪い

打ち合わせに出ると話さなければならないテーマが
いつもたくさんあります。
腕を組んで悩み続けるよりずっと健全ですが、
ひたすら体力を使います。

太陽の周りを地球が回っている、というのは
地動説の考え方です。
何かのニュースで、「太陽が地球の周りを回っている」と思っている
小学生が何割かいたという報道があり、
「学力低下」という言葉が頻発していました。
違和感を感じていたら、やはり同じように発想した方がいました。

http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/2787045

厳密なケプラーの定理を用いて物理的に言えば、
重力場での2体運動は、太陽も地球も、
お互いの周りを回っている、というのが正解です。
ただ質量差があまりに大きいため、
太陽が静止した系で取り扱ったほうがよく精度が出せる、というだけの
話です。
だから太陽が地球の周りを回っていると発想したところで
何の間違いもありません。

聞き伝えの常識でしか物を見られなくなった大人の学力低下のほうが
よっぽど心配です。

人間は環境に順応していく生き物です。
地下鉄を降りて目的の場所まで行くのに、
案内の地図が貼ってありますが、
あの地図は全く北を上に意識して描かれていません。
車に乗らない限り、建物を探すのに方位はあまり重要ではなくて、
分かりやすい路地に合わせて発想するほうが楽なのです。

ゆえに、都会でうまく生活するようになると、
北がどちらかという発想を捨てることが必要な局面が出てきます。
同じ報道の中で、太陽がどちらから昇るかを答えられないと
いう情報も付け加えられていましたが、
原因は同じです。

生きるために知らなければならないことというものが
あまりにも増えすぎたら、
それは生きるための制約条件なのであって、
人間が幸せになるのを妨げていく可能性が十分にあります。
全ての生き物は
生まれてすぐには本能以外の知識を持たないのです。

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