木曜日, 4月 14, 2005

理論物理と実験物理=虚業と実業の関係

加速器実験をしています。
測定器のレイアウトを整えたので、
パルス波形の観測がとても楽になりました。

人は自分が知らないものでも、
知っているものに例えられるとイメージがつかめることがあります。
もちろん例え話だけでは本質はわからないのですが、
本質を伝えようとするあまり難しさを前提にするのでは
やはり伝わらないと思うのです。

物理学には2本の柱があります。
一つは理論物理、そしてもう一つが実験物理です。
世の中で語られるときはこれらの総和としての結果が示されます。

この二つの柱はどちらも必要です。
実験物理の方向性を示すのが理論物理で、
理論物理の正当性を実世界で証明するのが実験物理です。

これは虚業と実業の関係に極めてよく似ていることに
気がつきました。

虚業は資金を特定の産業へと集中させて
その世界を発展させる目論見を示します。
資金の提供を受けた産業はそれによって
製品やサービスなどの実体を創り出し
世界を豊かにしていきます。

虚業の中には、
産業を本当に成長させるための「よい投資者」と
単に短期的な利益を求める「貸金業」が存在します。
どちらも虚業の顔をしていますが、
実世界に与える影響の方向が異なります。

理論物理の世界にも同じことが言えます。
実験物理に明るい展望を開く「よい理論の提唱」と、
単に理論物理学者が名誉を求めるための
「名誉としての理論の提唱」が存在します。

わたしにとって名誉はあまり求める意味がないのですが、
理論物理学者の中には自分の名誉と名を後世に残すことが
人生の目的になっている人がたくさんいるようです。

物理学は人の思想を神の領域へと高めようとし、
工学は神の知識を人の世界へ引きずり降ろそうとする、
というようなくだりをどこかで聞きました。
わたしは工学者なので、沽券ぶった知識を
片っ端から「引きずり降ろす」ことに喜びを覚えます。

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