月曜日, 5月 28, 2007

あなた方は侵略的な民だ、となぜ言わない

洗濯機にかけただけでは落ちない何かがあって
次第に色がくすむので、手洗いしてみました。
手洗いの時は生地にもよるのですが
合成洗剤はすすぎに時間がかかり、
石鹸は比較的すぐにすすぎが終わります。

わたしがいた頃の高専のカリキュラムは
受験という目標から一歩離れているせいかずいぶんと自由度が大きく、
歴史の授業にしても暗記をさせられた記憶がありません。

わたしの歴史の先生だった人は仏教の僧侶で、
半期に一度大胆にテーマを設定して好きな授業をしていました。

アステカ文明はなぜ滅んだのか、とか、
日本人の「恐れ入ってかしこまる」はどこから来たのかとか、
戦後50年の歴史認識はどうであったとか、
一事が万事こんな調子でした。

試験もB4の紙を渡されて論述せよ、だったので
今思えば良くも悪くも大学的な感じがします。

わたしが面白いと思って聞いていた講義は
その人にしかできないテーマで話してくれるときでした。
それはどうしてもとりとめがない、
ある人に言わせれば脱線した話になります。

金属の先生は金属材料の英知の結集として
日本刀に惚れているといい、
延々と日本刀を作る行程での塑性変化の見事さ、
顕微鏡で覗かなければ理解できないような金属組成として
刀体の粘り強さと刃先の硬さを熟知し、
一つの流れ作業にパッケージしているのだと話してくれました。

英語の先生はひたすらラテン語やギリシャ語の語源の編纂が研究テーマで、
英語は語源に分解できる、とよく話してくれて
それで分かりもしないのに
Merriam-Webster's Vocabulary Builderを買って読むきっかけになりました。

一事が万事こんな調子で、
プログラム講義では延々と研究テーマの画像処理と人工知能にまつわる話だったり、
熱力学だったらやたらと熱サイクル側ではなく冷凍サイクル側だったり、
高校の終わりに量子論を展開されたり、
微積分の基礎さえ知らない頃に電磁気のテストをしたり、
聞き纏める範囲が限界を超えていたのをよく覚えています。

試験に通るためには限定してまとめてくれたほうが良い、と
受験的で暗記が好きな学生にはめっぽう評判が悪く、
一方で徹底的に纏めて来る先生は
相当高度な数学的処理を要求したりしてきて、
しかしわたしにとってはそれが面白くて
脱線したところばかりが頭に残っていました。

先生の一致した意見は、
その時はやっていた「ゆとり教育」には全く反対の姿勢を取っていて、
旧課程の問題集や自作のテキストに目一杯情報を詰めて渡されました。
教科書も基礎に甘んじたようなものはほとんど使わず、
20年は使えそうな難解な物ばかり揃えさせられました。

なるほどその当時の多くの学生には不評でしたが、
先生の意味とは
どれだけ遠くにどれだけ密接な具体的目標があることを
示せることなのかも知れず、
今になって、そしてこれから彼らは
あの時聞いていた事はこれだったのかと
未知に向かうというもっとも困難な最初のバリアを
知らない間にクリアさせられていることに
気づいていくのだろうと考えています。

脱線ついでに、
歴史認識が常に自国の意識として行われるなら、
ペリーが圧力外交をしたために日本は不安定になった、
だから世界大戦のきっかけはヨーロッパやアメリカが作ったのだと
宣言することに何の問題もないだろうと思うのです。

ヨーロッパやアメリカの動向を見る限り、
我々は知識について遅れているかもしれないと不安になるらしく、
いまだに実際の欧米モデルを取りいれようとばかりしているのですが、
もし実際を知ろうというのなら、
圧倒的多数の経済難民や尽きぬ貧困を抱え、
労働者階級、なんて言葉が厳然とまかり通っているような国であることまで
見てくる必要があると思います。

そして[invasive]であるあなた方に
何を言われても動じる必要はない、と優しい国の民は思っていて、
日本が欧米のようにならないのは
「なれない」と「なりたくない」が混在していることに気がつくのです。

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